契約恋愛~思い出に溺れて~

少し俯いているから、長いまつげがよく見える。

どうしてちゃんとこっちを向いてくれないの?

どんどん湧き上がる不安が、とても居心地を悪くする。


「なに?」

「紗彩、サユがおかしいの、気づいてたか?」

「え?」


ゆっくり彼の視線が私を捕える。
まるで金縛りにでもあったように、ピクリとも動けなくなる。


「おかしいって?」

「学童で、うまくいってない子がいるらしい。鉛筆を隠されたりとか、小さな嫌がらせを受けたりしてるみたいだ」

「そんなの」


聞いてない。

確かに最初は戸惑っているようだったけど、そこまで嫌がる素振りは見せていなかったのに。


< 458 / 544 >

この作品をシェア

pagetop