契約恋愛~思い出に溺れて~


「英治くんには、言ったの?」

「俺はたまたまだ。
この間お邪魔した時、ユウさんに線香を上げようと思って二階に行ったんだ。
そうしたら、サユが机に宿題を広げてて、その脇に折れた鉛筆があったから、問いただしてみたんだよ」

「……」

「一度聞きだしたら、後はボロボロ泣きながら話してくれた」

「そんな」

「なんでお母さんに言わないんだって聞いたら」


彼の指が、私の指を掴む。
小さな刺激が、なんだか痛い。


「ママには言えないって。言ったら絶対悲しむから。
サユがダメな子だって思われたくないって」


彼と、目が合う。

責められているような気もするし、同情されているような気もする。

どちらにしろ、そこに含まれている感情は、幸せなものではない。


< 460 / 544 >

この作品をシェア

pagetop