契約恋愛~思い出に溺れて~
「英治くんには、言ったの?」
「俺はたまたまだ。
この間お邪魔した時、ユウさんに線香を上げようと思って二階に行ったんだ。
そうしたら、サユが机に宿題を広げてて、その脇に折れた鉛筆があったから、問いただしてみたんだよ」
「……」
「一度聞きだしたら、後はボロボロ泣きながら話してくれた」
「そんな」
「なんでお母さんに言わないんだって聞いたら」
彼の指が、私の指を掴む。
小さな刺激が、なんだか痛い。
「ママには言えないって。言ったら絶対悲しむから。
サユがダメな子だって思われたくないって」
彼と、目が合う。
責められているような気もするし、同情されているような気もする。
どちらにしろ、そこに含まれている感情は、幸せなものではない。