契約恋愛~思い出に溺れて~
英治くんは居住まいを正して、私に向き直る。
「紗彩」
「……はい」
「子供は何も考えてない訳じゃない。遠慮だって、心配だってする」
「はい」
諭されるように言われると涙が浮かんでくる。
紗優の変化に気づけなかった自分が、堪らなく情けない。
「そして、見限ったりもするんだ」
「……」
「俺はそうだった。どんなに寂しがっても、父親が一緒にいてくれる訳じゃない。だったら最初っから頼りになんかしない方がいいって思ってた」
「そんなの」
「いつかサユが、そう思わないとも限らない」
俯いたまま、彼の手から自分の指先を払う。
責め立てられてるようなこの空気が苦しい。
それ以上に、自分自身が情けなくて苦しい。