契約恋愛~思い出に溺れて~
数秒の沈黙がやけに長く感じて、
聞きたいような聞きたくない様なもどかしさに、胸をかきむしりたいような衝動にかられる。
やがて、意を決したように彼が口を開いた。
「紗彩」
「はい」
「紗彩が、仕事を好きなのは知ってる。でも、俺はサユのあんな姿見たくない」
「……」
「女の子だ。俺には言えない悩みも、いずれは出てくるだろう。
俺は、サユが大好きだ。今のまま素直な子供で育ってほしい。
その為には、ちゃんとあの子を見ていてやらなきゃいけないと思う。
自分から、弱音を吐きだせる子じゃない。
ちゃんとサインを見つけてやんなきゃならないんだ」
「英治くん」
「以前なら、経済的な理由があったろう。
だけど二人で働くなら何も問題ないはずだ。
だから、仕事をセーブして欲しい」
ピシリと、空気に亀裂が入ったような気がした。
言われるとは思ってた。
だけど実際に言われてしまったら、もう後戻りできない。