契約恋愛~思い出に溺れて~
そうして私の肩を掴んで、覗きこむように視線を合わせる。
彼の深い茶色の瞳が、
とても悲しそうに見えて、何だかとても泣きたくなった。
「サユを理由にするのはずるいな」
ポツリと言った彼の言葉に、少し顔をあげる。
彼は笑ってくれたけど、それが逆に辛そうで、嫌だった。
「俺が、そういう家庭を作りたいんだ。
家に帰ったら、紗彩がいてサユがいて。一緒に夕ご飯を食べたい。
サユの学校の話を聞いたり、皆で笑ったりしたい。
紗彩にも、今みたいな疲れた顔じゃ無く、元気な顔で迎えて欲しい」
「英治くん」
「俺が、二人と作りたい家は、そんな家なんだ」
「……だって」
「その為に、紗彩の仕事をセーブして欲しい」
同じ言葉を繰り返した時、もう彼の表情から迷いは消えていた。
言葉として声に出して。
彼の迷いは意志に変わって表に現れた。