契約恋愛~思い出に溺れて~
「か、考えさせて。ちょっと時間をちょうだい」
結局、言えたのはその言葉だけだった。
「分かった」
彼はそう言って、すぐに私から両手を離した。
体熱が遠ざかって、残った余韻が寂しさを煽る。
「紗彩、なんか飲む?」
気づかうように言ってくれる言葉にも、うまく反応出来ない。
「ううん。あの、もう、寝るね」
「ああ」
彼は立ち上がって、キッチンの方に向かう。
私は戸惑いを抱えたまま、ベッドの紗優の隣にもぐりこむ。
紗優の体温で温められた、英治くんの香りがする布団。
それに包まれてもまだ、心が落ち着かない。
直に英治くんがこちらに戻ってくる物音がした。
気まずさから寝たふりをして、彼の動きを窺う。