契約恋愛~思い出に溺れて~


 その日、彼に家まで送ってもらって、紗優を先に中に入らせた。

英治くんは窓を開けて、その様子を不思議そうに見ている。

ワンボックスカーの運転席は丁度私の目の高さで、見上げるでも見下ろすでもない感じが、ちょっとおかしくて笑えた。


「紗彩?」

「決めたよ」


彼の言葉を遮るように、自分の気持ちを口にする。

再び迷いが生まれる前に、伝えてしまいたかった。


「仕事、調整する。
今は案件を抱えているから、すぐは無理だけど。今のが落ち着いたら。
多分、役職も降りることになるから、秋の人事異動の時になると思う」

「……」

「今日の紗優見てたら、そうしたいって思えた。
それで、もしそれでも足りないって思ったら仕事やめることも考える」

「紗彩」

「言いづらいこと、言ってくれてありがとう」


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