契約恋愛~思い出に溺れて~
一歩車に近寄って、窓際に顔を寄せる。
彼の手が頬から顎にうつって、長い指で撫でられた。
くすぐったくて少し笑いながら、もう一つ伝えたかったことを伝えた。
「あのね、お願いがあるの」
「なに?」
「籍をいれたい」
「え?」
「英治くんとホントの家族になりたい。
紗優のホントのお父さんになって欲しい。
あなたが必要なの。
私たちの傍にいて?」
「紗彩……」
ポカンと開いた口。
彼には珍しい間の抜けた表情が、おかしい。
その口が、その瞳が、徐々に緩い弧をかたどる。
そうして出来上がった表情は、笑顔だ。
「ありがとう」