契約恋愛~思い出に溺れて~

そのまま、橘さんの隣を抜けだそうと立ち上がった時、
後ろから追ってきたのは青柳くんだった。


「葉山さん」

「どうしたの、青柳くん」

「俺は、またいつか葉山さんの下で仕事したいです」


ちょっと目が潤んでる。
顔も赤いし、もう酔ってるのかもしれない。

落ち着かせようと、真顔で一拍分沈黙をつくり、それから笑顔を作る。

一瞬こわばった顔をした彼から、徐々に緊張が緩んでいくのが分かった。


「その頃にはあなたの方が上司になってるわよ。期待されてるのよ、青柳くん」

「それでもっ、俺にとって葉山さんはずっと尊敬する先輩です!」


顔を更に赤らめながら言う青柳くんの言葉が嬉しかった。


「ありがとう」

「だから、ずっと頑張ってください」

「うん、ありがとう」


橘さんのような人は、この世界にはたくさんいるだろう。

理解してもらえないことはきっとたくさんあって、悔しい思いを抱えることもきっとたくさんある。

だけど、たった一人にでも、こんな風に言ってもらえるなら、頑張る価値はきっとある。

< 531 / 544 >

この作品をシェア

pagetop