契約恋愛~思い出に溺れて~
そのまま、橘さんの隣を抜けだそうと立ち上がった時、
後ろから追ってきたのは青柳くんだった。
「葉山さん」
「どうしたの、青柳くん」
「俺は、またいつか葉山さんの下で仕事したいです」
ちょっと目が潤んでる。
顔も赤いし、もう酔ってるのかもしれない。
落ち着かせようと、真顔で一拍分沈黙をつくり、それから笑顔を作る。
一瞬こわばった顔をした彼から、徐々に緊張が緩んでいくのが分かった。
「その頃にはあなたの方が上司になってるわよ。期待されてるのよ、青柳くん」
「それでもっ、俺にとって葉山さんはずっと尊敬する先輩です!」
顔を更に赤らめながら言う青柳くんの言葉が嬉しかった。
「ありがとう」
「だから、ずっと頑張ってください」
「うん、ありがとう」
橘さんのような人は、この世界にはたくさんいるだろう。
理解してもらえないことはきっとたくさんあって、悔しい思いを抱えることもきっとたくさんある。
だけど、たった一人にでも、こんな風に言ってもらえるなら、頑張る価値はきっとある。