契約恋愛~思い出に溺れて~
「紗優、ただいま」
「あ、ママ。おかえり!」
18時20分。
紗優は夕食を食べていたのか、ご飯粒をつけた顔で、玄関まで私を迎えに来た。
いつもツインテールに結っている髪が、その動きに合わせて軽やかに揺れる。
手を広げて、小さな娘を捕まえて抱きしめる。
自宅にはない独特の香りが鼻についた。
保育園の匂いがつくのかな。
平日はいつもこんな匂いがする。
「ママもいっしょにごはんたべよう?」
「うん。ママ、後でまたお仕事に行かなきゃいけないの。紗優の顔見に来たのよ」
「ふふ。ね。ちょっとだけ」
紗優が嬉しそうに私を引っ張って、
「おばあちゃん。ママのごはんも」
という。
母は、やれやれという顔でご飯をよそると私に手渡した。
少し疲れたような表情だ。
短く切った髪に白髪が混じっていて、60歳という年齢にしてはしわが目立ち老けて見える。
それを言うと、誰のせいかと尋ねられそうだから黙っているけれど。