契約恋愛~思い出に溺れて~
「ごめん、母さん。ただいま。……また行かなきゃいけないんだけど」
「だろうね。でなきゃこんな時間に帰ってくることなんかないもんね。
……ホントに、なんでそんな男みたいに働かなきゃいけないのかね」
「ごめん」
「ほらママ、はやく」
紗優に急かされて、慌ただしく母の作ってくれた夕食を食べる。
イカの煮物にほうれん草のおひたし、大根とニンジンのお味噌汁。
子供向けのメニューではないのに、紗優は文句も言わずに食べてるんだろう。
「おいしいね」
そう私が言うと、紗優は少しだけ困った顔をする。
「うん。おばあちゃんのごはん、おいしいよ。
でもサユはあさごはんがすき。ママのごはんだもん」
仕事の忙しい私は、朝食しか作らない。
後の家事は母に任せきりだ。
「そう? ありがとう」
「うん!」
寂しいだろうに、文句も言わない紗優がいじらしくて、涙が出そうになる。