契約恋愛~思い出に溺れて~
その時、携帯電話が鳴った。
慌てて着信ボタンを押し、足早に廊下に出る。
「達雄?」
『紗彩、今日時間あるか?』
「まだ仕事中よ。終わるのは21時を過ぎるわ」
『紗優ちゃんは?』
「一度帰って会ってきた。多分、もうすぐ寝ると思う」
『……じゃあ出てこれるか?』
達雄の声は、なんだか落ち込んでいるような声だった。
今日は金曜日。
確か、母親の見舞いに妹と行くとか言ってたんじゃなかったかしら。
それが一人で、私に会いたいって言う?
「何かあったのね」
『やっぱりばれたか』
「当たり前でしょう。いいわ。でも仕事が終わったらよ」
『会社の前まで迎えに行くよ。今車なんだ』
「わかった」
そう言って電話を切ると、自然に溜息がでる。
もう慣れたと言えば慣れたけど、仕事がたてこんでる時に達雄の落ち込んだ声は少し滅入る。