藍色の城
──もしもーし!!陽、出るのおそーい!!
陽とは何もなかったフリ。
当然、沈黙が流れる。
──聞いてる!?
──うん…。
相変わらず優しい口調。
声の振動が伝わる右耳に
熱が帯びていく。
──陽~、悪いけど迎えに来て?
酔っちゃって帰れそうにない。
陽本人にさえ、こんなこと言った
ことはない。
きっとコウくんなら今頃イライラ
してるよね…!?
──あのさ、ボクは陽じゃなくて
昊なんだけど?
かける相手間違えてない?
ほら、怒ってる。
ゴメンね、意地悪して。
──そんなの知ってるよ…。
知っててかけた。
間違ったフリしてわざとかけたの…
キミの反応が見たくて……
久しぶりに聴く声に泣かないように
冷たい言葉をかけられたら
もう諦めようと思った。