バニラ
「誰って、君と同じ立場の人だけど?」

余裕綽々(ヨユウシャクシャク)で笑いながら言った恭吾とは対照的に、和志は訳がわからないと言うように戸惑っている。

「理彩は、どこにいるんだよ!?」

そう言った和志に、
「さあねえ、何しろ今の俺たちは君が知らない場所にいるんだから」

よっぽどおかしいのか、恭吾は声を出して笑い出した。

「じゃあ、そろそろお楽しみの時間だから切るね」

「おい…」

耳から携帯電話を離すと、恭吾があたしに返してきた。

「電源を切っておいたから」

「ありがとう、ございます…」

あたしは恭吾の手から携帯電話を受け取った。
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