バニラ
あたしもこのバーの常連な訳だけど、彼と会うのは初めてである。

「名前は?」

形のいい彼の唇が動いて、そう聞いてきた。

「――沢里理彩(サワサトリサ)…」

自分の名前を言ったあたしに、
「俺は、東雲恭吾(シノノメキョウゴ)」

彼――東雲さんは自分の名前を言った後、笑った。

その笑みは、ふわりとまるで砂糖菓子のように甘かった。


目を開けたら、見知らぬ天井が視界に入った。

背中には、フカフカな感触があった。

「――あれ…?」

あたし、東雲さんとさっきまでバーにいたんだよね?

彼といろいろな話をして、いろいろなお酒を飲んで…それからどうしたんだろう?
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