バニラ
そう言えばと、ふとあたしは思った。

「よくあたしが通ってた大学の場所がよくわかったね」

先に恭吾にそれを言うのを忘れていた。

「昨日言ったでしょ?」

恭吾が言った。

昨日って、あたしは大学のことを言ったかしら?

恭吾は息を吐くと、
「あんなに酔っていたら、覚えてないか」
と、呟くように言った。

「えっ、酔ってって…」

「現に記憶がないじゃない」

それを言われたら、記憶が出てこない。

「ついでに言うなら、ちゃんと許可をもらったんだ」

「――えっ…?」
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