バニラ
その声に視線を向けたら、東雲さんだった。

降りたんじゃなくて、どちらかと言うと落ちたんですけど。

心の中で呟いたあたしに、
「大丈夫?」

東雲さんが手を差し出してきた。

差し出された彼の手を借りて、あたしはベッドにあがった。

「いやあ、それにしてもスーツがシワシワだな」

東雲さんはそう言った後、自分のスーツに視線を向けた。

確かに彼の言う通り、お互いの服はそのままだった。

お互いの以上はないかも知れないけど、場所は異常ある。

「何かあった方がよかった?」

ジョーダンめかして言ってきた東雲さんに、
「――そんな訳、ないじゃないですか」

あたしは呟くように返した。
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