バニラ
次の日のことだった。

「何これ?」

そう聞いてきたあたしに、
「チョコレート」

恭吾は何でもと言うように答えると、チョコレートの銀紙を外して口に入れた。

箱の中に、銀紙に包まれたチョコレートが12個入っていた。

恭吾はそれを手に持って会社から帰ってきた。

「へえ、珍しいね。

バレンタインデーじゃあるまいし」

そう言ったあたしに、
「この間食事に連れて行ってくれたお礼とか何とかって」

「――えっ?」

あたしは聞き返した。

この間、食事に…?

それはあたしの聞き間違いであって欲しいと思った。

「まあ、彼女の話を聞いただけだし、俺は彼女に誘われただけだし」
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