バニラ
「ビックリした、いないかと思ってた」

そう言ったあたしに、
「だって驚かせたかったんだもん」

フフッと、恭吾はやらしく笑った。

そう言えば恭吾のスーツ姿をまともに見るのは初めてだなと、あたしは思った。

「何、欲しいの?」

そう聞いてきた恭吾に
「ち、違うに決まってるでしょ!」

あたしは首を横に振って否定した。

そもそも何を思ってそんなセリフが出てきたのよ。

「それよりも、ケータイを持ってきた?」

「当たり前でしょ、ほら」

あたしは恭吾に携帯電話を差し出した。
< 71 / 150 >

この作品をシェア

pagetop