銀杏


「…でも、どうすればいいのかわからなかった。咲がどんな気持ちでいるのか、何をして欲しいのか…。今でもわからないよ。」

「……ねえ。小さい頃って今より喜怒哀楽が激しかったかな?」

「何?突然。誰のこと?」

「…私。」

「さあ、よく覚えてないけど。咲はとにかく泣き虫だった。俺と張り合う気満々で、競争しては負けて大泣き。」

「ふふっ。そうだったね。」

手をかざして掌を見た。まだ手を握った感触が残ってる。

「…手……」

「ん?」

「…繋いでいてくれたのは…尊?」

「…うん。」

「夢…見てた。お母さんの。
川の向こうにいるお母さんに手を伸ばしたら、その手を掴んでくれた。
届く筈のない距離なのに手を握れたのは…尊の手だったんだ。」

「……」

その手の温かさはお母さんのものと同じ。
私の記憶のお母さんの温もり。
どうして一緒なの?




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