銀杏
家に帰ると、リビングでうずくまる咲を見つけた。
凄い汗をかいて、苦しそうにしてる。
俺はタオルで汗を拭いてやることしかできなくて、咲の髪を撫でながら手を握り、傍に居続けた。
しばらくして俺に気づいた咲が、ここにいるのを確かめるように俺を呼ぶ。
ごめん、咲。ちゃんと守ってやれなくて。
咲が一緒に暮らすようになって、母ちゃんから言われていたこと。カドヤの店の前を咲に通らせてはいけないということと、家に一人にしないこと。
小さい頃はわからなかったけど、それが咲を守ることだと言われて、一所懸命だった。
でも今ならわかる。
傷ついた心は癒えてはいない。
どうすれば咲は楽になるのか、まだわからないけど、傍にいることが咲のためなら、俺は――。