銀杏
「尊。お願いがあるの。」
「何?」
「…ぎゅってして。おばちゃんがしてくれるみたいに。」
「……。」
「尊?」
「…え…は…な…何つった?」
「ぎゅってして?」
「……。」
尊は驚いて言葉を失くしたみたいだった。
「…ごめん、いい。気にしないで。」
ソファーに座って伸ばしていた足を縮こめて膝を抱えた。
目線はじっと足先を見つめたままで、沈黙が流れる。
誰も見てないのに、テレビは一方的に喋り続けている。
尊は立ち上がって咲の横に座り直した。
「咲。」
「ん?」
両手を広げた尊がすぐ目の前にいる。