銀杏
「おいで。」
優しく微笑んだ顔はどこかおばちゃんみたいで、全てを包み込んでくれそうな、そんな気がした。
躊躇うことなく胸にしがみついた。
尊の胸はトク…トク…トク…とした音ではなく、ドックン、ドックンと鳴ってる。
「尊。心臓の音、力強いんだね。」
「お…おう。男だからな。」
クスクスクス…変な言い訳。自転車に乗せてくれた時はこんな大きな音しなかったよ。
「私…心臓の音好き。安心するんだあ。一番好きなのは、おばちゃんの音。優しい音がするんだよ。知ってた?」
すると尊は肩を掴んで、ぐいっと私を離した。驚いて尊を見ると、赤い顔で私を睨む。
「俺が一番だって言え。」
「…は?」
「俺が一番だって言えってば!」
「…尊が…一番だよ。」