四竜帝の大陸【青の大陸編】

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カイユさん達がお城を出て17日目の夜。
新しい家族を連れて、カイユさん達が帰ってきた。

月明かりの差し込む夜の温室で、私は初めて【弟】と対面した。

「わあ~! この子がジリギエ君? かわいいっ、とってもかわいい! あ、でも……えっと諸事情ありまして……1番かわゆいのはハクちゃんで、ジリギエ君は2番目です」

かわいい……かわゆい事に並々ならぬこだわりを持つハクちゃんの手前、私はすぐに言葉を付け足した。
カイユさんに抱かれて眠るこの子が……ジリギエ君。
なんて綺麗で、かわいい赤ちゃんなんだろう。
そう思った。

「トリィ様。この子を……【弟】を、抱いていただけませんか?」

カイユさんに抱かれた<赤ちゃん>は私が知っている<赤ちゃん>ではなかった。

「え……いいの?」
「はい、ぜひ。さぁジリギエ、この方が姉様ですよ」

ハクちゃんにお許しをもらい(彼は抱っこにもこだわりがあるようなのだ)、カイユさんにジリギエ君を抱かせてもらった。
私の腕の中にカイユさんがそっと、ジリギエ君を置いてくれた。
間近で見た【弟】は、想像以上に可愛くて……綺麗な存在だった。

「わぁ……素敵な鱗」

青みがかったグレーの鱗は1枚1枚は半透明で、それが重なり合い全身を覆っていた。
蛇のような細長い体に、短い手足がちょこんとついていた。
平たいお顔に、大きなお口。
眼の脇に小さな突起物……お耳かな?

「姫さん、ほら。見てごらん? この翼は幼生の時だけなんだ」

ダルフェさんがジリギエ君を起さないようにそっと、開いて見せてくれた翼は広げるとけっこう大きくて……淡い月光を通すほど薄い皮膜がついていた。
シャボン玉で作ったようなそれは、ため息が出るような美しさ。

「綺麗……竜族の赤ちゃんって、本当に綺麗だね」

ジリギエ君の重みを腕に感じながら、ハクちゃんそっくりの小さな竜の赤ちゃんを胸に抱く‘お母さんなった私’を想像して……自分の口元が緩むのを感じた。
カイユさんが私に抱かせてくれた小さな【弟】は、見た目よりも体重があり、羽毛のように軽いハクちゃんとは全く違った。
ハクちゃんと四竜帝は、ダルフェさんやカイユさんとは竜体の大きさも能力も……いろいろ違う点が多いみたいだった。

人型と竜体を持つ竜族。
竜族だけど、普通の竜ではない<監視者>のハクちゃん。
そんな彼と私の赤ちゃんは、どんな姿をして産まれてくるんだろうか?

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