四竜帝の大陸【青の大陸編】
おかしいと思ったのよぉおお~。
漫画や小説なんかだと……。
①女の子が「私、踊れないわっ! どうしましょう!?」とか可愛く言う。
②恋人役(まあ、王子様とか騎士とか御曹司とか)が「僕がリードするから平気さ!」と、たいした練習も無く一発オッケーで周囲を魅了する華麗なダンスをしてしまう。
ああ、やっぱりこんなの嘘なんだぁああ~!
そんなうまい話は有り得ないのだ。
円舞曲……ワルツなんて、今までやったことなんか無い。
リズム感なんて素敵なものは、お母さんのお腹に忘れてきてしまった気がするし。
ああ、嫌な記憶が蘇る……。
体育教師の趣味なのか、中1の時にマイムマイムという謎めいた踊りをやらされた。
足の動きが覚えられなくて、ロボットみたいだと先生に失笑されたのは悲しい思い出。
さらに遡ること数年。
小学4年の運動会では、よさこいをやった。
26になった今でもよさこいの記憶が残っているのは、本番より練習が苦痛だったためだ。
普段の練習はクラス単位でやっていた。
その為に私は悪い意味で目立ってしまい、新任の若い女性教師に放課後もしごかれた。
私は運動会が来るのが嫌というより、怖くなってしまった。
結果的には。
4・5・6年合同で大人数だったのでごまかしがきいて、本番で間違えても怒られなかったけど。
これが私のダンスの歴史なのだ。
できるなら闇に葬りたい、暗黒史です。
「りこ? 疲れたのか? 立ち通しだったしな、休憩を……」
黙ってしまった私を心配したのか、ハクちゃんが顔を寄せてきた。
「……大丈夫」
私はハクちゃんの手を、ぎゅっと握った。
私もハクちゃんも、ダンスは初めて。
それなのに、私はハクちゃんを当てにして……ずるかった。
「練習しよう、ハクちゃん。基本的な動作はハクちゃんが覚えてくれたんだから、後は私が頑張る!」
過去にダンスを見たことがあるハクちゃんが踊れなかったのは、今まで覚える気が無かったから。
ハクちゃんはダンスに、興味が全く無かったってことだよね?
「ハクちゃんも言ってたじゃない? なんとかなるって。うん、そうだよ! なんとかなるよっ」
なのに、記憶してくれた。
私のために……私と踊りたいって、思ってくれたから。
「私、ハクと<花鎖>を付けて踊りたいの」
私は踊りなんて、嫌いだった。
下手くそで、そんな自分が惨めで……。
でも、貴方となら。
「ハクと踊りたい」
私も。
貴方となら、踊ってみたいって思ったの。
「ああ、我もだ」
表情を柔らかいものに変えたハクちゃんとの‘かっちんこっちんダンス’は、温室から見る空が紅く染まり始めるまで続いた。
漫画や小説なんかだと……。
①女の子が「私、踊れないわっ! どうしましょう!?」とか可愛く言う。
②恋人役(まあ、王子様とか騎士とか御曹司とか)が「僕がリードするから平気さ!」と、たいした練習も無く一発オッケーで周囲を魅了する華麗なダンスをしてしまう。
ああ、やっぱりこんなの嘘なんだぁああ~!
そんなうまい話は有り得ないのだ。
円舞曲……ワルツなんて、今までやったことなんか無い。
リズム感なんて素敵なものは、お母さんのお腹に忘れてきてしまった気がするし。
ああ、嫌な記憶が蘇る……。
体育教師の趣味なのか、中1の時にマイムマイムという謎めいた踊りをやらされた。
足の動きが覚えられなくて、ロボットみたいだと先生に失笑されたのは悲しい思い出。
さらに遡ること数年。
小学4年の運動会では、よさこいをやった。
26になった今でもよさこいの記憶が残っているのは、本番より練習が苦痛だったためだ。
普段の練習はクラス単位でやっていた。
その為に私は悪い意味で目立ってしまい、新任の若い女性教師に放課後もしごかれた。
私は運動会が来るのが嫌というより、怖くなってしまった。
結果的には。
4・5・6年合同で大人数だったのでごまかしがきいて、本番で間違えても怒られなかったけど。
これが私のダンスの歴史なのだ。
できるなら闇に葬りたい、暗黒史です。
「りこ? 疲れたのか? 立ち通しだったしな、休憩を……」
黙ってしまった私を心配したのか、ハクちゃんが顔を寄せてきた。
「……大丈夫」
私はハクちゃんの手を、ぎゅっと握った。
私もハクちゃんも、ダンスは初めて。
それなのに、私はハクちゃんを当てにして……ずるかった。
「練習しよう、ハクちゃん。基本的な動作はハクちゃんが覚えてくれたんだから、後は私が頑張る!」
過去にダンスを見たことがあるハクちゃんが踊れなかったのは、今まで覚える気が無かったから。
ハクちゃんはダンスに、興味が全く無かったってことだよね?
「ハクちゃんも言ってたじゃない? なんとかなるって。うん、そうだよ! なんとかなるよっ」
なのに、記憶してくれた。
私のために……私と踊りたいって、思ってくれたから。
「私、ハクと<花鎖>を付けて踊りたいの」
私は踊りなんて、嫌いだった。
下手くそで、そんな自分が惨めで……。
でも、貴方となら。
「ハクと踊りたい」
私も。
貴方となら、踊ってみたいって思ったの。
「ああ、我もだ」
表情を柔らかいものに変えたハクちゃんとの‘かっちんこっちんダンス’は、温室から見る空が紅く染まり始めるまで続いた。