四竜帝の大陸【青の大陸編】
私はハクちゃんの腰に回した腕に、さらに力を込めた。
 
「駄目、ハクちゃん、駄目よ! この人っ、セレスティスさ……むきゃっ!?」

私の背中と腰に添えられていたハクちゃんの両手が、ぐっと私を自分の身体へと押し付けた。

「これ以上りこに寄るな、抑えがきかなくなる。……我はお前を傷つけるわけにはいかん。カイユが泣けば、りこが悲しむ」

ハクちゃんの冷たい声にも、涼しげな微笑は消えなかった。
 
「残念。殺してくれれば、ミルミラを追えたのに。ああ、僕が死んでもあの子は泣かないよ? ……そういう約束だからね。……おっと、珍しく乱暴だね、陛下」

銀色の髪が数本、舞った。
一瞬で3メートル程後ろに下がり、彼は床に方膝をつく。

彼の前には女神様が左手を掲げて立っていた。
上げられたその手には、青く鋭利な5本の刃物……爪!?

あの手でセレスティスさんを払い除けたっってこと!?
だから髪の毛が……。

「いい加減にしろ、セレスティス。ヴェルを困らせんな……それから、何度も言わせるんじゃねぇ! 死ぬのは許可できねぇんだ」

竜帝さんの艶のある青い爪が、30センチ位伸びていた。
竜体のハクちゃんがかぼちゃを切った時みたい……。

「おちび~、来るのがちょっと早かったな。まあ、いいけどよ。もう分かったみてぇだけど、こいつはセレスティス……カイユの父親だ。ま、顔見りゃ分かるか。そっくりだもんな」

竜帝さんが右手を軽く左右に振ると、長かった爪が一瞬で元の状態に戻った。

「ちっ……父親」

どうみても20代にしか見えない。

あ、そうか。 
竜族は長命種だから……それにしたって。

違う。

私のお父さんと違いすぎるっ!

揚げ物を食べつつ特保飲料をがぶ飲みし、加齢臭に悩む私のお父さんとは全く違う~っ!!
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