四竜帝の大陸【青の大陸編】
哀れなモノって……うん、聞かなかった事にしよう。
うう~! もう、ハクちゃんったら。
セレスティスさんの質問の内容・意味が通じてなぁ~いっ!!

「これを母体から出した我が言うのだから、間違いない」
「へ? おおおっおい、じじい!? それ初耳だぞっ!」

え?
母体から……ハクちゃんが赤ちゃん竜帝さんのお産婆さん!?

突っ込みどころ満載な会話だけど。
セレスティスさんの戸惑いを隠さない呆けた顔と声が、私の意識をひっぱった。

「ねぇ。この人ってこうなの? こないだはもっとまともだったような気が……」

こないだ……竜帝さんの執務室でのことだよね?
あの時は会話らしい会話をしたとは言いがたいですし……。

「は、はい。その、そこが彼のチャームポイントといいますかっ。あの……なんか、あの、す、すみません。悪気は無いんです! ちょっと天然なだけでっ」
「セリアールはランズゲルグより長身だった。セリアールは……ふむ、我の尾1本分は背が高かったな」
「…………ハクちゃん」

私はがっくりと肩を落とした。
そんな私の背中を、カイユさんが無言で撫でてくれた。
 
ああ、なんということでしょう。
一生懸命に愛する旦那様をフォローしようとする私の努力を、その旦那様自らぶち壊してくださいましたぁあ~。

「いや、だからあのね。外見とかじゃなく、内面の……まあ、貴方にはどうでもいいことか。はははっ、貴方と話してたら、なんか色々馬鹿馬鹿しくなってきちゃったよ!」

笑った。
声をあげて。
『王子様』が、笑った。

「ねぇ<監視者>殿、皇太子はどうするのことになったの? いずれ<処分>するの?」
「否。生かすことにした」

ハクちゃんが答えると。

「生かす? 生かすね。ふ~ん、成る程ね。……じゃあ、もういいや。帰る」

セレスティスさんは背を向けて、ドアに向かって歩き出した。 
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