四竜帝の大陸【青の大陸編】
問題大有りだぁああ~!

「大変! どうしよう!!」

慌てふためく私と違い、この見目麗しい父娘(おやこ)は冷静……冷静を軽やかに飛び越え、冷酷だった。

「ご安心ください。あれは見た目通りに丈夫な人間ですし、使い物にならなくなっても替えはいくらでもおりますわ」

カ、カイユさん!?

「クロムウェル、運が悪かったね。今夜、出発できるかな? ……うん、<監視者>殿の仰るとおり、問題無しだ。最初からいろいろ折れてるなら、もう気を使わなくて良いし。ふふふっ。多少追加したって、ばれないかもね~」

うわっ、セレスティスさん折る気満々でしたの!? 
クロムウェルさんにはナマリーナの件でお世話になったし。
小竜の竜帝さんを絶賛してるところとか、親近感があるし。

「あ、あの! セレスティスさんっ」

ちょっことだけでも、優しく掴んであげて欲しいのですっ。
陳情(?)しようとした私に、セレスティスさんが笑みを深くして言った。

「ふふっ、“生かす”か……うん。なんて素晴らしいんだろうね、おちびちゃん」 
「……セレスティスさん?」

生かす。
生かす?

それって、さっきハクちゃんがセレスティスさんに……。

「ねえ、おちびちゃん」

額にかかる銀の髪を、綺麗に整えられた爪を持つ指がはらった。
気障な仕草だけど、この人がするととても自然。
指先の動きまで洗練されている。
大きな手で無造作に前髪をかき上げるハクちゃんとは、対照的というか……。 

「ミルミラのことをカイユから聞いたね? だから皇太子を僕から逃がそうとした」
「……は、はい」

やっぱり、気づかれてたんだ。
誰も口にしなかったけど、皆……ダルド殿下以外、気がついているよね。

「おちびちゃんは、極刑と終身刑。どっちがより辛いと思う?」
「え?」

極刑と……。
終身刑?

「セレスティスさん? 私、意味が……」
「待って……父様っ! この子は、そんなつもりではっ」
「カイユ。甘やかすのもいい加減にしなさい。後々苦しむのはこの子なんだよ?」
「とっ……」

叱咤を隠さぬ硬い声音に、カイユさんは言葉に詰まった。


< 628 / 807 >

この作品をシェア

pagetop