四竜帝の大陸【青の大陸編】
「カイユが生まれた時、すごく嬉しくかった。ちっちゃなあの子が可愛くて、可愛くて……だからクソババアのせいですっからかんになっちまった財政を立て直すために、人間にだって頭を下げれた。餓鬼だった陛下と一緒に踏ん張って……必要なら何だってしてきた」

俺達は、竜の雄は。

「クソババアの言ってた竜族の未来なんて、どうでも良かった俺だけど。カイユのために‘未来‘が欲しくなったんだ、必要になったんだ。こんなにあの子を愛してんのに、なんで俺は……竜の雄は、こうなんだろうな?」

雌を想い過ぎるから。  
 
「あの子の為ならなんでもしてやりてぇって、心の底から思うのに。俺はカイユを‘俺の一番‘にしてやれないんだ」
「……俺だって、そうですよ」

恋が、愛を噛み砕く。

「俺の‘一番’はカイユです」

ジリギエ。
お前もいつか、わかるだろう。
お前もきっと、知るだろう。

狂気のような恋情に食い尽くされる、喜びを。

「なあ、ダルフェ」

セレスティスはそのまま後ろに倒れ、ベッドに仰向けになった。
水色の眼を閉じ、封をするかのように両手で覆った。

「俺、お前がカイユに求婚するつもりだって知った時、お前を殺そうと思ったんだぜ?」

親だったら<色持ち>のつがいになんか、させたくないと思って当然だ。

「知ってましたよ。俺が入れられてた液槽の前で、あんたは何度も刀を抜いてたでしょう?」 
「はは、さすが<色持ち>! 気づいてたんだな」

この大陸に来た時。
旦那のせいで、俺の身体は生ごみ寸前だった。

「<色持ち>のてめぇには、先がないって分ってたのに。俺、できなかったんだ……」

セレスティスじゃなくたって、<色持ち>の俺を簡単に殺せた。

「ごめんな、ダルフェ」 
「いえ……生かしておいてくれて、感謝してますよ」

産んでくれた母さんにも、育ててくれた父さんにも。
感謝することが、できる俺になれた。

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