四竜帝の大陸【青の大陸編】
「そのことで貴女を悲しませるは辛い。でも、それが私(カイユ)なんです」

言いたい。
言いたいのに。

「私を怖がってもいいんです。人殺しの竜だと嫌悪してくださってかまわない。でも、私が私(カイユ)であることを、悲しまないで」

カイユさんに、私の思いを言わなきゃならないのに。

「私にとってそれは当然であり、必然なのです」

言葉が。

「他者の首を落とせることが出来る『私』に生まれて、良かったと思っています。私は今まで多くの者の命を奪ってきました。そしてこれからも他者を傷つけ、殺し続けるでしょう。そして何時の日か、多くの者を屠ってきた私も強い者に負け、討たれる時が来るでしょう」

声が出ないの。

「それを、悲しまないで」

出たのは、涙。
この涙は。
何のためのものなんだろう?

「覚えていてください、トリィ様」

自分の為じゃない。
カイユさんの為でもない。

「この世にある心の数だけ、多種多様な善と悪があるのです」

ああ、そうか……。

この涙は。

涙なんかじゃない。

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