四竜帝の大陸【青の大陸編】
「い、いやぁっ! ハッ……んんっ!?」
脳と口が同時に動いた私の顔を、小さな青い竜が全身で包み込む。
「やめろっ、おちびっ! ヴェルを呼ぶな、セシーが殺されちまう!」
「!!」
竜帝さんに言われ、ハクを呼ぼうとしていた自分に気がつき、そんな自分を止めるために歯を噛み締めた。
呼んだら駄目!
駄目!!
竜帝さんがいてくれるんだから、絶対大丈夫っ!
カイユさんと約束してくれたものっ。
ハクを、あの人を呼んじゃ駄目っ!
薬草園を何も無い『白(せかい)』に変えた。
子供が欲しいと泣き喚いた私に、世界中の男の人を殺すと言った。
寂しがりやで泣き虫で真っ白なあの人を、私が<魔王>にしてしまう。
だから。
駄目。
私があの人を呼ぶのは、今じゃない。
私は。
居間でロマンス小説を真面目な顔して読みながら、私が呼ぶのを待っててくれるあの人の。
呼べば直ぐに迎えに来てくれて、「我のりこ」って言ってくれるあの人の腕の中に。
笑顔で、帰るんだから。
「<青の竜帝>を舐めやがってっ! 《失せろ、亡霊!!》」
部屋の中の空気が一箇所に圧縮されるような、この部屋自体が押し潰されるような有り得ない感覚に、私は目を開けていられなくてぎゅっと瞑った。
同時にどすんという鈍い音と、振動。
「ったく、“あの女”が出てくるなんて……。おちび、どこか痛むか?」
私を気遣う穏やかな声音に合せるように、凝縮した空間がふわりとやわらぐ。
「い……いえ」
答えながら、ゆっくりと眼を開けた。
脳と口が同時に動いた私の顔を、小さな青い竜が全身で包み込む。
「やめろっ、おちびっ! ヴェルを呼ぶな、セシーが殺されちまう!」
「!!」
竜帝さんに言われ、ハクを呼ぼうとしていた自分に気がつき、そんな自分を止めるために歯を噛み締めた。
呼んだら駄目!
駄目!!
竜帝さんがいてくれるんだから、絶対大丈夫っ!
カイユさんと約束してくれたものっ。
ハクを、あの人を呼んじゃ駄目っ!
薬草園を何も無い『白(せかい)』に変えた。
子供が欲しいと泣き喚いた私に、世界中の男の人を殺すと言った。
寂しがりやで泣き虫で真っ白なあの人を、私が<魔王>にしてしまう。
だから。
駄目。
私があの人を呼ぶのは、今じゃない。
私は。
居間でロマンス小説を真面目な顔して読みながら、私が呼ぶのを待っててくれるあの人の。
呼べば直ぐに迎えに来てくれて、「我のりこ」って言ってくれるあの人の腕の中に。
笑顔で、帰るんだから。
「<青の竜帝>を舐めやがってっ! 《失せろ、亡霊!!》」
部屋の中の空気が一箇所に圧縮されるような、この部屋自体が押し潰されるような有り得ない感覚に、私は目を開けていられなくてぎゅっと瞑った。
同時にどすんという鈍い音と、振動。
「ったく、“あの女”が出てくるなんて……。おちび、どこか痛むか?」
私を気遣う穏やかな声音に合せるように、凝縮した空間がふわりとやわらぐ。
「い……いえ」
答えながら、ゆっくりと眼を開けた。