四竜帝の大陸【青の大陸編】
「聞こえてるよな? いいか、その[想い]は単なる記憶であり単なる記録だ。巫女王は死んだ。“あいつ”に引きずられるな! お前はお前! セシー・ミリ・グウィデスだっ!」

セシーさんの肩が、その声に反応したかのようにびくりとはねた。

「あ……」

ゆくりと目蓋が動き、紅茶色の瞳が青を映して。
何度も瞬きをしながら、自分を覗き込むようにしている青い竜を見た。

「りゅ……竜帝陛下?」

戸惑うような、不思議そうな表情。
でも、その声はしっかりとしていた。

「私……いま……なにを? わたっ……あぁ! なんということをっ!」

セシーさんの顔から手を離した竜帝さんは身を起こした彼女から離れ、私とセシーさんの中間に移動した。
翼を動かしながら、頭を抱えてうずくまってしまったセシーさんへと視線を向けていた。

「前に、俺は言ったよな? 辛くなったら、耐えられなくなったら……お前が望むなら、<青の竜帝>がお前をその重荷から開放してやると」

<青の竜帝>の声に。

「陛下……」

セシーさんは。
すがるような瞳で。

「私もあの時、言いましたでしょう? 逃げるのは性に合いません、と」

震える声で、答えた。

でもその言葉には、強い意志。
竜帝さんはセシーさんの答えを聞き。

「そうか。……小さい時は天井の染みが怖いって、べそかくような臆病な娘だったのに。お前も大人になっちまったんだなぁ」

懐かしむように、青い目を細めた。 
「陛下。もし私が過去の魔女達に“私”を食い尽くされたら、その時はよろしくお願い致します」
「ああ、任せとけ」
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