四竜帝の大陸【青の大陸編】
「<監視者>は近いうちに黒の大陸に移るのだと、青の陛下にお聞きしました。これは好機です……大丈夫、秘密裏に進めます。ダルド殿下もきっと協力してくださいますから。手紙を送る術式の研究をしつつ、術の精度を高めてトリィ様を異界へ御帰しできるように……あぁ、そうよ! そうなのよ! トリィ様を居るべき世界に戻すことは、貴女だけでなくこの世界の為にも必要な事なんだわ!」

ミー・メイちゃんの瞳は爛々と輝き。
紫の瞳には情熱を越える狂喜の色。
 
「……や……やめてっ!」

ハクの居ない世界なんて!
いや!
そんなの、嫌!!

「好きなの!あの人が好きなの! この気持ちはまがいものなんかじゃ、嘘なんかじゃないっ!」

この気持ちは、偽物なんかじゃない!

「彼が魔物の王や邪神だとしても! あの人がっ、ハクが好きなの!!」

ハクの過去を知っても。
この想いは強くなるばかりで。

強く、強く……どこまでも堕ちていく。
 
「<監視者>を、ヴェルヴァイドをっ」

先代魔女の狂気の中に。
未来の自分を重ねてしまうほど。

「あの人を、ハクを愛しているのっ! だから……だから、お願い!」
「トリィ様!?」

私はミー・メイちゃんに頭を下げた。
彼女が焦ったように何かを早口で言っていたけれど、かまわずに。
身体を折り、深く深く……。
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