最後の恋、最高の恋。
だから少し躊躇したけれど「すごく、楽しかった、デス」と正直に伝えた。
坂口さんの気持ちを知ってる私と違って、坂口さんは私の気持ちに気付いてないから、とても自分がズルい気がして、“好き”という関係を変えるような明確な言葉は口にできない変わりに、坂口さんにはそれ以外の気持ちは偽らないでいたいと思う。
恥ずかしいけれど、でも、私の気持ちを知らない坂口さんにしてあげられるのはこれくらいだから。
“好き”以外はすべて正直でいたい。
「また、どこか行きましょうね」
『そんなこと言っていいの? 調子に乗るよ?』
「鍋、食べに行くんですよね?」
笑いまじりの声に、昼間にちゃんと返事できなかった誘いの返事を今更ながらにしてみる。
『よかった、綺麗にスルーされてたから断られたのかと思ってた』
「……いや、あのときはとっさに反応できなかったので、すいません」
『謝らないで、ちゃんと約束してくれただけで嬉しいんだから』
こうやってちゃんと言葉にしてくれる人ってなかなかいないと思う。