最後の恋、最高の恋。


『うん、俺も美月ちゃんがそうやって言葉にしてくれるのがすごく嬉しい』

「……一緒ですね」

『だね』


電話の向こうの坂口さんと笑い合う。

まるですぐそばにいるような感覚で、すごくくすぐったくなる。


『じゃあ、また連絡する』

「はい、私も暇なときメールしていいですか?」

『もちろん。 早いけど、お休み』

「おやすみなさい、明日も仕事頑張ってくださいね」

『ありがとう、おやすみ』


いつまでも続きそうなやり取りにそこで区切りをつけて、私は電源ボタンを押した。

携帯から聞こえる無機質な音をぼんやり聞きながら、通話時間が表示された画面をじっと見つめる。


“坂口さんの言葉が嬉しい”、なんて、好きっていうより恥ずかしい気が今更ながらにしたけど、言ったものは取り消せないし、取り消すつもりもないから困る。


わたしはきっと、この恋を持て余している。
始まったばかりの恋なのに、今まで感じたことがないくらい深く想っているだなんて……。



今までしてきた“恋”が、まるで、おままごとのような気持ちに思える。

< 106 / 337 >

この作品をシェア

pagetop