最後の恋、最高の恋。
今日は週の初めの割には来客予定が少なくて、長めの休憩時間が割り当てられているんだけど、私は広げたお弁当に手を付ける前に私なりの覚え方を教えることにした。
「あの人、結構猫背でしょう?」
「はい、なんだか普通の猫背よりちょっと変わった猫背ですよね」
こういう感じの、と言いながらあのお客様の猫背の真似をした藤田さん、結構似ている。
そう、今朝のお客様は顔に特徴はあまりないけれど、身体の方に特徴的な部分がある。
まるでわざと肩をすくめているかのような、変わった猫背の持ち主。
顔で覚えようとしてしまう最初のうちは、よく見ればわかるような身体的特徴を見落としがちなのだ。
私もそうだった。
「で、名前は憶えてる?」
「はい、柳様ですよね?」
それに頷いて、私は笑って言った。