最後の恋、最高の恋。

こういう風に相手の家族に会うことなんて今までなかったうえに、自分に自信がない分緊張も不安も半端ない。


「急にこんなところ連れてきて、怒ってる?」


的外れな問いに顔を上げれば、学は怒られて耳を垂れている大型犬のようにシュンとしている。

それに首をゆるゆると振って、「緊張してる」と正直に答える。


「お手伝いさんっていっぱいいるの? 家の廊下にずらーって並んで“おかえりなさいませお坊ちゃま”とか声揃えて言っちゃったりするの?」


緊張を紛らわせるために全く関係ないけど気になっていたことを聞いてみれば、学は「いないよドラマじゃあるまいし」とあっさり否定する。


「お手伝いさんって言っても、さっきみたいに車を移動してくれたり訪問する人を出迎える人と、掃除をしてくれる人の二人だけだし」


あとはたまに庭の手入れに庭師を呼んだりするくらい、と私の突然の問いにもちゃんと答えてくれた。

きっと緊張をなんとかほぐそうとするためにこんなことを聞いているんだと、分かっているんだ。



なんて言ったって学は美月マスターだから。

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