最後の恋、最高の恋。
思わず顔からベッドのマットに突っ伏す私の頭を、今度は直で坂口さんの大きな手にポンポンと撫でられた。
「支度して、美月ちゃん。 俺とデートしよう」
その言葉に恐る恐る顔を上げれば、思ったよりも近くに綺麗な顔があってビックリした。
その距離になって初めて、自分がすっぴんだったことを思い出して泣きたくなったんだけど、続けられた「俺とデートしてくれる?」というセリフで涙はどっかに引っ込んで、自分の意志とは裏腹に顔に熱がこもるのが分かった。
「顔真っ赤で、可愛いね」
追い打ちのような言葉に、眉をしかめて「可愛くなんてないです」と視線を反らして何とか反論してみたけど、思った通り効果はなくて笑われてしまう。
「さ、着替えて。 とびきりオシャレして、可愛いパジャマを買いに行こう」
その誘いを断ることだってできたはずなのに、部屋から出ていく坂口さんを呼び止めることもしないで、私は一番のお気に入りのワンピースに着替えていた。
腰より少し短い髪をなんとか頭のてっぺんでお団子にまとめ上げて、メイクを仕上げて部屋を出ていこうとしたところで、ふと我に返る。