千年の追憶【完】
雪路が帰り、夕食も風呂も済ませると、何となく手持ちぶさたになった。


部屋に一人で居ると、つい考えてしまう。


昼間、水菊に不愉快な思いをさせたんじゃないかとソワソワした。


もう辺りは薄暗くなっている。


夜が更ける前に、水菊に会って謝ろうと思い立った。


でも…。


水菊の部屋の前まで来て、今更迷惑になるんじゃないかと、心配になってしまった。


何をやっているんだ、俺は。


声をかけるのをためらっていると、中から水菊の声がした。


「誰か居るの?羽…琉…?」


水菊の口から聞きたくなかった名前。

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