千年の追憶【完】
そっと障子を開けて、そこに居たのが俺だと確認した水菊は、とても驚いて頭を下げた。


「早時様!
わざわざお見えになるなんて!
ご用があれば私の方から伺いましたものを!」


「いや、いいんだ。
頭を上げてくれ。」


俺は片足をついて、水菊の体を起こした。


瞬間、ドキリとした。


いつも後で一つに束ねている髪は解かれ、頬にかかっている。


既に寝間着に着替えていたようで、いつもより深く見える胸元が艶かしい。


何よりも湯上がりのふわりと優しい香りが、俺の理性を狂わせた。


部屋の中を伺うと、布団の用意も終わっている。


俺は、ごくりと唾を飲んだ。

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