≡ヴァニティケース≡
─────蒔田のオヤジじゃないのかしら……でも完璧に演技をしているかも知れないし─────
その後もチラチラと蒔田に目をやりながら、自分の身に振り掛かった災いに思考を費やしていた美鈴だったが、蒔田と話す機会は中々巡って来なかった。普段から会話が少ない上に報告すべき業務連絡も無いようでは、カマをかけようにもチャンスが無い。
─────ああどうしよう。このままじゃダメ─────
焦れば焦るほど時間だけが無常に過ぎ去っていく。やがて思考も空転の領域に達してしまった。
今こちらがなんのアクションも起さなければ、調子に乗った蒔田がまた暴漢に指示を出すかも知れない。そして今夜にもまた襲われて、あの恐ろしいナイフが美鈴の体を抉らないとも限らない。