≡ヴァニティケース≡
キュルルゥゥ。
「いやだ、恥ずかしい!」
不安に相違せず、すぐに腹の虫が活発な自己主張を始めてしまった。こんな時にまで分を弁えないとは、我が胃袋のエゴイスト加減に、美鈴はもはや呆れてしまうしかなかった。
「ははは。私もね、この店の前を通るといつも腹が鳴ってしまうんだ。匂いも良いが、味がまた格別でね。……と、大きめの皿は無いかな」
台所へ立とうとしている石田に座布団を促して、美鈴は焼き鳥の包みを受け取った。
「お飲み物、発泡酒しか無いんですけど……」
「いや、ほら、キレが有るから、こういうしつこい物には却って良く合うじゃないか。是非それを頂こう」