≡ヴァニティケース≡
大皿に盛られ温め直された焼き鳥達は、より甘く、芳ばしい薫りを立ち上らせている。
「さあ美鈴くん。好きなだけお食べ」
「はい、頂きます」
美鈴は焼き鳥を遠慮なく頬張った。勢い良く串をしごいた。
「先生! これ美味しい! ありがとうございます」
そして発泡酒の缶に口を付けた時、初めて自分が泣いている事に気が付いた。
「……あっ、アレ?」
満面の笑みで礼を述べたつもりだった。美味しい物を食べたら自然に零れる、幸せな笑顔を疑いもしなかった。なのに今は何故か涙が溢れて止まらない。やがて美鈴は嗚咽を抑えられなくなっていた。
最初は戸惑いを見せていた石田も、いつしか美鈴が泣くに任せてその背中をさすっている。彼は恋人でも父親でもないけれど、その手はとても大きく温かい。