≡ヴァニティケース≡
「そうか。でもまあ美鈴くん、あまり深入りはしない方がいい。ほら、相手の神経を逆撫でするってことも有るからね。……だがしかし、解らないのはパーカーの男達だ。何の目的が有って美鈴くんを守っているんだろう。……ああ、もう一本有るかね?」
「ええ。……はい、どうぞ」
美鈴が新しい発泡酒を運んで来ると、石田は奪うように缶を手に取り、栓を開け、まるでひと息に飲み干してしまうかのような勢いで喉を鳴らした。
「ふう。でもストーカーから逃げてばかりでは生活費もままならなくなってしまうだろう? 明日からは私が迎えに来るから、一緒に職場に行けばいい」
「そんなご迷惑は掛けられません。それに……」
美鈴はもちろん断った。ありがたい申し出ではあるけれど、そこまで甘える訳にはいかない。