≡ヴァニティケース≡
だが、そう言い淀んで表情を曇らせた美鈴に、石田は言葉を拾い上げて続けてくる。
「帰りのことだな? それならどうかね美鈴くん、この際、君を守ってくれている人達に委ねてみては」
「え?」
石田は何かを確信したように頷いている。美鈴は彼の真意が解らなかった。
「でも、さっき先生が仰っていらした通り、彼らの目的が掴めなくては……」
「確かに朝令暮改も甚だしいとは思う。まあ、その向かう所はどうあれ、今確かなのは彼らが美鈴くんを守っているという事実だ。警察が心許ない状況ならば、いっそ彼らを頼る他有るまい」
なるほどそうかも知れないと、美鈴は漠然とそう思った。このままただひっそりと隠れ住んでいては、生活を維持出来なくなるのは必至だ。まさか全く外出をしない訳にはいかない。外に出ることが即ち危険を意味するなら、通勤するのも同じではないか。それに、ストーカーと対峙していかなければ、これ以上の手懸かりは掴めない。ことの決着は元より、なんの進展も望めないのは明らかだった。