≡ヴァニティケース≡
─────有った。……でもどうやってあの中を調べようかしら─────
自分の席に戻っても、頭の中はそのことで一杯だった。仕事をしながらも鞄のことが頭から離れない。なんとかしてあの中身を調べたい。持ち歩いている鞄ならば、幾ら周到な彼でも証拠を残している可能性が有る。
「ほら大城はん。あんまり気張らんと、もうお昼ですえ」
気付けば時刻は昼休みに掛かっている。すると真っ先に蒔田が昼食へ出て行った。美鈴がこの職場に来てからというもの、彼が弁当を持参しているところは見たことがない。好機と言えば好機だ。
だが、昼休みもパート事務員のひとりは事務所に残っている。彼女はおおむねここで昼食をとるのだが、幾人かで机に弁当箱を広げ、ひと時の雑談に花を咲かせる事も多い。職場的には和やかな風景ではあるが、今はそれが歯がゆい。他に人が居ては、蒔田のブリーフケースに手を出すのは難しくなる。何か良い方法はないかと思い巡らせても、衆人環視の中で鞄に触れては、それだけで人格を疑われ兼ねない。