≡ヴァニティケース≡
「それで……あなた方に任せておいて、本当に大丈夫なんですね?」
「勿論です。ただ、妨害されるとは思ってもいなかったので……」
作業服の男は強面に似合わず腰が低く、言葉も丁寧だった。
「言い訳だったら聞く耳は持ちませんよ。だいたい着手金に幾ら払ったと思ってるんですか。馬鹿にするのもいい加減にしてください」
スーツの男は腹立たしげにコーヒーカップを置いた。ガチャンと音を立てて、溢れてしまったコーヒーを皿が受け止める。その勢いで、安っぽい威厳と共に黒縁眼鏡がずり落ちた。
「そもそもあんなやり方をして、あなた方が捕まってしまったら、こちらにも火の粉が降り掛かってしまう。そこの所、ちゃんと解かってるんですか?」
分厚いレンズの向こうにある双眸からは一切の感情が読み取れない。一見紳士然とはしているが、多分仕事に於いては冷徹にも残酷にもなれるタイプなのだろう。あまり術策を弄するようには窺えない。ダメなものはダメと、はっきりと言い切る性格のようだ。