≡ヴァニティケース≡
「あれは若いもんが先走ってしまったので……」
「そ・れ・が・言い訳だと言ってるんです。いいですか。もっと大きなお金を動かしさえすれば、あなた方の上部組織にだって容易に働き掛けることが出来るんですよ?」
「困ります。すいません、何とかうちにやらせて下さい」
「それなら、もう少しプロらしく立ち回って頂かないと!」
「申し訳ありません。今後はこのような事にならないよう気を付けますので……」
それまでは背もたれに深く身体を預けていたスーツの男が、不意に体を起こした。そのまま作業服男の目前まで顔を近付け、唐突に猫撫で声を出して言う。
「勿論、こちらとしてもあなた方にやり遂げて頂くのを望んでいるんです。それに信頼しているからこそ、こうしてお話ししているんですから」