≡ヴァニティケース≡

 そして病院の事務室では、美鈴が証拠探しに躍起になっている。


「そっちはどないだす?」


「うーん……ちょっと中まで染みちゃってるみたいですね」


 その時、美鈴の目が手帳に挟まれた一枚のメモへ釘付けになった。


─────……こ、これって……─────


 その後、何が有る訳でもなく時計は進み、終業のチャイムが鳴るより先に蒔田が席を立った。時計を見ればまだ終わりまで3分はある。彼は何を急いでいるのか、既に上着を羽織っていた。


「じゃ、わいはお先に」


「お疲れ様です」


「ご苦労はんでした」


 だが、彼が先に帰るのならそれを止める理由などない。むしろ余計な小言を言われることもないので都合が良い。


「じゃあ、私も帰れるわね」



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