≡ヴァニティケース≡
「いえ、それが乱暴目的じゃないんです。最初はナイフで切り付けられて、次はバイクに跳ねられそうになったんですから」
案の定、輝きを失っていた宇佐美の目が、また爛爛と光った。いったん噂話に食いついた主婦ならば、例えニューヨークの下水にワニがいる話でも乗ってくる筈。確実に美鈴の術中にはまっているのが見て取れた。
「命を狙われなはった言わはりますのん! そらえらい往生しはりましたな。恐ろしおしたな、大城はん。それで警察には届けはったんですやろ?」
─────完全に落ちたわね。宇佐美さんは私の言葉を欲しがっている─────
「ええ。最初は怖くてそのまま家に帰ったんですけど二度目は。雑踏の中だったので、皆さんと一緒に警察に話しました」
美鈴は自分の話を交えながら、蒔田の日常を根掘り葉掘り聞き出した。それがおぼろげにいだいていた予想を揺るぎない確信へと変えていったのだ。